在宅医療では水分摂取量を調節することが多々あります。
在宅における脱水の危険性、経口補水液ORSの必要性について解説しています。
在宅・高齢者における脱水の危険性、理由
在宅の現場では、食事量だけでなく水分量を測定しているところがほとんどです。
なぜなら、高齢者は脱水に陥りやすく、体調を崩すことが多くなるためです。
高齢者が脱水状態に陥りやすい理由は次のようなことが挙げられます。
- 身体の水分量の低下
- 筋肉量の低下
- のどの渇きを感じにくい
- 腎機能の低下
体内での”水”の役割は、主に次の4つです。
- 栄養素や酸素を運ぶ
- 老廃物を排泄する
- 体温の調節
- 体内の機能を維持する
脱水状態になると、水の役割が不十分になり、めまいや嘔吐、便秘、こむら返りから発熱・意識消失などさまざまな異変を生じます。
高齢者では、上記の理由により水分の保持量が少なくなっているため、こまめに摂取することが重要なのです。
脱水の予防と対策
脱水の初期症状は様々であり、なかなか他の疾患による症状との区別がつきません。
特徴的な初期症状として次の3つが挙げられます。
- 手足の冷感
- 爪を押した際に、白色からピンク色に変わるのに2秒以上かかる
- 皮膚を引っ張っても戻らない
こういった初期症状に注意しつつ、介護施設においては水分量を測っているため、必要水分量に達してない場合は水分を摂るよう促すのです。
必要な水分量は体格や疾患など人によって異なりますが、不感蒸泄において少なくとも800-1000mL/日の水分が失われるため、少なくとも1000mLの水分が必要であるとされています。
また、介護施設において脱水時、水やお茶を服用するケースが9割以上といったデータがありますが、この場合は電解質が摂れずせっかく摂取した水分が便や尿として排泄されてしまいます。
そのため、脱水時には十分な電解質が含まれている経口補水液[ORS]が有用なのです。
脱水対策で注目、経口補水液[ORS]、経口補水療法[ORT]とは?
日本で有名な経口補水液というと、OS-1やアクアソリタでしょうか?
経口補水液[ORS:Oral Rehydration Solution]は、もともと発展途上国の下痢症状に対して使用されてきました。
その際、非常に高い有用性が認められ、ORSを使用した経口補水療法[ORT:Oral Rehydration Therepy]が近年は先進国において実施されています。
実際に、点滴治療の約8割は本来必要なく、経口補水液で代用することが可能というデータもあります。
また、どのように脱水状態を改善するかといった、作用機序も明らかになっています。
経口補水液は、腸管において、ナトリウム・グルコース共輸送機構によって吸収されます。
これは、浸透圧を使用して吸収されるため、高いナトリウム濃度とグルコースが必要となるのです。
このような根拠もあり、経口補水液は、飲む点滴とも言われ、急な点滴の実施が難しい高齢者施設などで経口補水療法が注目されているのです。
経口補水液とスポーツドリンクの違い
風邪やインフルエンザ、ノロウイルスなどの感染症にかかったとき、スポーツドリンクを飲んでいる方は多いかと思います。
これは、発熱や下痢によって水分だけでなくナトリウムなどの電解質が失われるためです。
しかし、実はスポーツドリンクの電解質量では、感染症にかかったときに服用しても不十分であると言われています。
一方で、経口補水液は、スポーツドリンクよりも高濃度の電解質を含み、糖質濃度が低く設定されています。
Na[mEq] | K[mEq] | Cl[mEq] | 炭水化物[%] | |
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米国小児科学会 | 40-60 | 20 | – | 2.0-2.5 |
経口補水液[OS-1] | 50 | 20 | 50 | 2.5[ブドウ糖1.8] |
スポーツドリンク | 9-23 | 3-5 | 5-18 | 6-10 |
糖質濃度が低い理由は、水分の吸収速度や保持量に影響するからであり、経口補水液は2%前後に調節されています。
OS-1[経口補水液]服用時の注意点
前述したようにOS-1をはじめとした経口補水液は、水分吸収・保持に最適の糖質濃度があらかじめ調節されています。
そのため、次のような調整は避けなければなりません。
- 薄めない
- 凍らせない
- 砂糖を加えない
美味しい味ではないため、10℃くらいに冷やす、ストローで服用、ゼリータイプを服用などの工夫を行います。
また、OS-1にはナトリウム、カリウムなどの電解質が含まれており、高血圧や糖尿病、腎機能低下や高カリウム血症の方には無視できない量が含まれています。
OS-1に含まれる電解質量[1本500mL中]
ナトリウム量:575mg=味噌汁1杯分
カリウム量:390mg=バナナ1本分
このような疾患がある場合には、どのくらいの量を服用すべきか事前にかかりつけ医と相談しておきましょう!